導入事例

県立高等学校

埼玉県立上尾橘高等学校

目標が明確な検定で、モチベーションの維持が可能に

2019年度から新教育課程を導入され、授業の一環でビジネス数学検定を受検されている埼玉県立上尾橘高等学校の岡部太郎教諭に話を伺いました。

導入実績

2019年12月

ビジネス数学検定3級 36名受検

2020年12月

ビジネス数学検定3級 20名受検

導入背景

ビジネス数学検定の選択授業・検定を導入された背景、理由、先生方の思いやねらいなどをお聞かせください。

本校は2019年度から、3つのコースからなる新教育課程を導入しました。そのなかの「情報ビジネスコース」では商業・情報科目を学ぶことに加え、資格取得が特色の1つになっています。教育課程をつくる過程で数学科もその特色に合った取り組みができないかと考え、調べるうちにビジネス数学検定の存在を知りました。
数学科ではふだん目にする広告などの数字に騙されないように、数学Ⅰ「データの分析」に力を入れていて、4年前からレポートを用いた評価などを行っています。ビジネス数学検定では「データの分析」では扱われないような表現についても設問があり、身のまわりにあるデータを正確に読み取ることを学べる教材として、ビジネス数学検定を採用しました。

検定後の反応

ビジネス数学検定を実施したあとの生徒の方々の反応はいかがでしょうか。実施後に現れた変化などありますでしょうか。

割合についての理解が深まった生徒が多いです。桜美林大学リベラルアーツ学群教授の 芳沢光雄さんの「『%』がわからない大学生 日本の数学教育の致命的欠陥」(光文社新書)でも指摘がありましたが、大人になっても割合の考えがわからない人が一定数います。しかし、振り返ってみると、高校の授業で割合について振り返る機会は多くありません。おそらく中学校でも「割合とは何か?」までさかのぼって学ぶ機会はほとんどないのではないかと思います。
2019年度の「全国学力・学習状況調査」では、「200人のうち80人」が全体の人数の何%かを選ぶ問題で、小学生の正答率は53.1%でした。半数が割合の初歩の初歩でつまずいているにも関わらず、中学校以降で割合を学ぶ機会は極めて限定的です。
ビジネス数学検定の中心的なテーマは、割合について多角的に学ぶことだと思っています。そのため、授業のはじめの4回は「割合とは何か?」という内容で授業を行います。そこでの生徒の反応は「意外とかんたん!」「その程度のことだったの?」といったものです。

今後について

貴校の教育・人材育成における今後の取り組みや展望などあればお聞かせください。

ビジネス数学検定を実施するなかで、普段の数学の授業とは違った課題が見えてきました。その1つが文章を正確に読み取る力の不足です。国立情報学研究所社会共有知研究センター長・教授の新井紀子さんの「AI VS. 教科書が読めない子どもたち」(東洋経済新報社)では子どもたちが文章を正しく読めないまま大人になっていることが指摘されています。当然現場の私もそのことを肌で感じていましたが、教科書を用いた数学の授業では、定型化された問題に取り組むことが多く、数学の授業でその壁にぶつかることは多くありませんでした。しかし、ビジネス数学検定に取り組むうちに、実生活で生徒が情報を正しく読み取れていないことが顕在化され、なんとかしなければならないと思っており、解決策を現在模索中です。

今の時代に求められる人材について

近年、どの企業・団体においても、データ活用の重要性が叫ばれ、数字を扱える人材が職業・職種を問わず求められています。これから進学・就職して社会にでていくうえで、高校生のうちに身につけておくべきスキルや考え方、今の時代に求められる人材についてなど、読者に向けて伝えたいメッセージがあればお願いします。

数学は身のまわりのあらゆる所に隠れています。しかし、現代ではあまりに巧妙に隠れてしまっているためにそれに気づくことは難しく、数学のありがたみがわからなくなってしまっていると思います。そんななかで私が一番身近に感じるのは、広告に使われる数字の裏にある数学です。
「平均寿命」という言葉を聞いたことがあると思います。みなさんはこの言葉にどんなイメージがあるでしょうか。2020年7月31日の日本経済新聞では、男性の平均寿命が81.41歳になったという記事が載りました。これを見て「俺は80歳前後で死ぬのか~」と思うかもしれませんが、その認識は正しいのでしょうか。そもそも平均寿命とは、どういう式を用いて計算されたものなのでしょうか。
「平均寿命」は保険商品の広告の中でよく見かけます。広告は商品を売るために作られるものですから、嘘はないにしてもみなさんの目を引くような数字にあふれています。騙されないようにするためにも数学を学びましょう。

コロナ禍における検定の位置づけや役割について

今年はコロナ禍で、授業や学校生活をはじめすべてにおいて大きな変化が生まれているかと思いますが、「学びの保障」という観点から検定の位置づけや役割など、どのようにお考えですか。

コロナ禍でオンライン教育への注目が集まり、いち早く行動できた地域とそうでない地域で教育機会の格差が生まれました。一方でオンライン教育と言ってもさまざまで、その実施効果についてはそれほど言及されていません。生徒の実態に合わせて行う学校の定期考査ももちろん重要ですが、一定の難易度が保たれた検定は、コロナ禍で学習状況調査のように生徒や教員がその生徒の実態を知る役割を担うことができると思います。また、検定は目標が明確なため、モチベーションの維持が可能です。

学校紹介

埼玉県立上尾橘高等学校

1983年創立の県立の普通科高校。面倒見のよい生徒指導、進路指導が自慢。2学年からアドバンスコース、スタンダードコース、情報ビジネスコースの3類型に分かれ、生徒の興味や進路に対応している。「わかる できる 自信をつける」をスローガンに習熟度別授業や少人数授業を実施。過去には県内初の東北支援ボランティアを行うなど、時代に対応した教育を行う。2021年度から通級指導を実施。

https://ageotachibana-h.spec.ed.jp/

学校キャラクター「タッチー君」

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